蛇行する川のほとり
Tuesday, July 20, 2004
[novel, 恩田陸]
ひさびさに恩田陸作品を読みました。全3巻の3部構成ですが、一冊がとても薄いので、さらりと読むことができました。各巻で語り手が交代するので誰が主人公かすら定かでなく、そのふわふわした不安定さが逆に魅力になっています。
川のほとりの街。船着場のある家。塔のある家。夏休み中の、けだるい暑さの中での子供たちだけの合宿。恩田陸は本当に雰囲気作りが巧みだと思います。第一部の語り手である鞠子が絡めとられるように「船着場のある家」へと向かう様子。現在と、忘れられた過去との交錯。日常から隔絶された世界。綺麗な言葉で記された世界に惹きこまれていきます。
どうして人は忘れることができるのでしょう。絡まった糸の先にある過去を知ることは、彼らにとって幸せなのか。彼らは忘れてしまったことで過去に縛られていたのと同時に、過去から守られてもいたのではないかと感じました。
「真実? どこにそんなものがあるのでしょうか。真実。その言葉を口にしたとたん、その言葉が持つ虚構の猛毒で、舌が腐り始めてしまうことをあたしは知っています。あたしたちは、自分が見たものしか信じられない。いえ、自分が見たいものしか信じられないのです。真実とは、あたしたちが見たいと想っているもののことなのですわ」