老ヴォールの惑星
Wednesday, August 17, 2005
[SF, 小川一水]
小川一水さんの「老ヴォールの惑星」を読みました。「ギャルナフカの迷宮」「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」「漂った男」の4篇が収録されています。星雲賞受賞作の「第六大陸」は、月の商業開発をめぐるプロジェクトX的な内容でしたが、こちらはいかにもサイエンス・フィクションといった印象の中篇集でした。
表題作の「老ヴォールの惑星」は、木星型のガス惑星の極限環境に棲息する知的生命体の生態を描いた物語。たった50ページ弱で描かれた彼らの生き様は高潔でした。
「幸せになる箱庭」は、現実でも問題が深刻化していきそうなテーマ。仮想世界が現実よりもあらゆる意味で優れていた場合に、現実に価値を見出せるのか。
書き下ろしの「漂った男」は、偵察機の墜落により液体で覆われた惑星に着水したパイロットのお話。通信のみ可能で、捜索は絶望的で、自殺することもままならないという状況。着地点が素晴らしい。
たねのない魔法が許されるファンタジーとは異なり、理屈をこねくりまわして魔法のたねを提示するのがSFのSFたる所以だと思いますが、それに偏りすぎていないので読みやすいし物語に入り込みやすいです。好みの分かれめはSFが好きか嫌いかではなくて、この人の描く人物(人とは限りませんが)が好きになれるかどうかだと思う。世界観を流用するのではなくて、物語ごとに異なる世界が構築されているので、バックグラウンドに想像をめぐらせるのも楽しかったです。
「サマー/タイム/トラベラー」のSF作品の羅列に触発されてか、なんだか最近SFづいてます。スペースシャトル関連のニュースを聞いているうちに「第六大陸」を読み返したくなったのですが、古典作品ももっと読んでみたいです。SF作品に限らず、一生のうちに読める量よりも出版される量の方が圧倒的に多くて、さらにそこに古典が加わるわけで、途方に暮れてしまいます。