土の中の子供
Wednesday, August 17, 2005
[novel]
文藝春秋に掲載されている「土の中の子供」を読みました。芥川賞に期待をよせているわけではないのですが、タイトルから想起される情景に惹かれました。
タクシーの運転手として生計をたてる主人公は、親からは捨てられ、引き取られた遠い親戚の家ではひどく虐待され、土に埋められた。恐怖にさらされ続けた彼は、自ら恐怖を求めるような行動をとるようになる。
基本的に主人公が自問自答して自己解決してしまうので、説明しすぎの感がありました。もう少し余韻を残すというか、多くを語らない方が、世界が広がったと思います。導入部は主人公の思考が不快で読むのがちょっとつらかったですが、土の中に埋められる回想あたりから一気に読めました。全体的に暗いお話なのですが、主人公自身に「暗い」と言わせてしまったせいで、暗さの底が浅くなってしまったように感じられて残念でした。
読み終わった後に選評を読んでみると、驚くほど辛辣な内容でした。そんなにひどいと思うなら該当なしにすればいいのにと思うのですが、そこは大人の事情なのかな。安易にトラウマを抱えさせるのは危険だというようなコメントがありましたが、楽をするためにトラウマを持ち出すのであれば怠慢だと思うし、トラウマそのものを安直だと言ってしまうのは傲慢だと思います。